【カウンセラーコラム】「よい母」とは?

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芦田 美香(あしだ みか)

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雨に濡れる紫陽花が美しい季節となりました。たくさんの紫陽花が咲いている光景も素敵ですが、各々をじっくり眺めると、それぞれの違いに気がつき、心が和むような気がします。

先日、新幹線に乗る機会がありましたが、行きも帰りも、泣く赤ちゃんを抱っこし、デッキであやす親御さんの姿をお見掛けしました。赤ちゃんは、泣いて快・不快を表現します。成長とともに徐々に多くの感情が分化し、表現するようになります。
泣く行為に対し、声掛けしながら抱き上げてゆすってあげたり、おむつを替えてあげるなど、日常的な世話をし、不快を取り除くことの繰り返しが、赤ちゃんの「こころ」の育ちに大きくかかわっています。「自分が働きかけると、周りは応えてくれ、事態は良い方向へ変化する」「この世界は信じるに足りる」「自分は O.K.」という気持ちが育っていきます。

赤ちゃんのこころが育つのであれば、世話を完璧にこなさなければと必死になりそうですが、ここで大切なことは、「ほどよい母」が望ましいということです。イギリスの小児科医ウィニコットは「good enough mother(ほどよい母がよいのですよ) 」と言っています。この「ほどよい母」という表現のあいまいさが、難しいと感じる方もいらっしゃるかもしれません。

言葉を発する前の子どもとのコミュニケーションについて書かれている「インリアルアプローチ」という本の中で、大人のかかわり方の手がかりになるものとして「SOUL」があると紹介しています。SOUL とは、Silence(静かに見守ること)Observation(よく観察すること)Understanding(深く理解すること)Listening(耳を傾けること)の頭文字からとったものです。あくまで言葉を発する前の子どもとのコミュニケーションについての内容ではありますが、どの年代のお子さんにとっても、親としての姿勢で大事な内容ではないかと思います。子の伸びゆく力を信じ、見守り、子が求める手助けを必要な時にする親の姿勢が、子の自立につながるのではないかと思います。ほどよい母とは、100%ではなく80%でよいという意味に加え、強迫的に完璧さを求めるのではなく、子の求めに気持ちを寄せ、アイコンタクトしながら温かい声掛けやタッチ、ハグをし世話をする、自分本位ではなく、子の思いを大切にするという母のイメージと考えるとわかりやすい気がします。

ほどよい母は、母だけの努力で成り立つものではありません。大変な子育ての中で、親が精神的な余裕を持てるようにしていくことが大事です。そのためには、親以外の大人、地域全体で子を見守り育てる姿勢が求められると思います。
抱っこする、声掛けするようにと言われても、親が育ちの中でされた経験がないから難しい、イメージが沸かないと思われる時には、子育てのモデルになる方が近くにいたら、真似することから始めてみるとよいと思います。そして、疲れた時には安全な頼れる人に助けを求めたり、社会的資源を利用するとよいと思います。他の人に頼るのは勇気がいりますし、気を遣って疲れてしまうという方もいらっしゃるかもしれませんが、きっとその勇気は、お子さんの今後の成長と、健全な愛着形成につながり、子育てそのものもぐんと楽になるきっかけとなると考えます 。

参考文献:竹田契一・里見恵子(1994) 「子どもとの豊かなコミュニケーションを築く インリアル・アプローチ」日本文化科学社

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